西穂丸山ハイキング

授 業 名 西穂丸山ハイキング

【「信州環境カレッジ」補助事業】

実施学校名 松本市立安曇小学校
実施学年、学級

参加人数

5年 8人
担当者 担任
実施日(期間) 令和7年10月21日
講師名 上高地登山案内人組合
実施概要 1 西穂丸山に登り、上高地を横から俯瞰し、地形の成り立ちについて実感をもって知る
2 梓川の流路、大正池の様子を観察し、景観と治水について考えを深める
3 高所での調理に適した高山ラーメンの魅力を知る
4 中部山岳国立公園奥飛驒ビジターセンター見学
実施状況
(授業風景)
曇天の中、「しらかば平駅」から「新穂高ロープウェー」に乗車。4分後、ロープウェーはその雲を突き抜けた。西穂高口駅のデッキからは雲海に浮かぶ槍ヶ岳、笠ヶ岳、焼岳、乗鞍岳、遠方には白山を一望。初めて見た雲海と3000m級の山々の稜線という神秘的な光景に感動の言葉を口にした子ども達だった。山岳ガイドの中野氏が穂高連峰を指さし、目的地である「西穂丸山」と「西穂山荘」までの行程を説明してくださった。穂高連峰のギザギザな稜線となだらかな西穂丸山。ここで「溶結凝灰岩」と「滝谷花崗閃緑岩」の境目を観察した。

登山の身支度を確認し、西穂山荘に向けて出発。アップダウンのある1時間半の登山であるが健脚の子ども達は景色や植物を観察しながら歩みを進めた。途中、登山道を整備する方に出会い、感謝の気持ちを抱いた子ども達は「西穂山荘」に到着。念願の「西穂ラーメン」を食べた。沸点の低い高所でも火が通るようにと高山ラーメンの細麺を使い、スープは信州産の味噌を使った県境らしいラーメンに舌鼓を打った子ども達。腹ごしらえの後、いよいよ西穂丸山への本格登山だ。

西穂山荘からの急登を越えた子ども達は稜線に出て、目的の景色である「平らな上高地」を横から俯瞰した。昨年度「岳沢」から「平らな上高地」を見ていた子ども達は予想より近くに見えた大正池の様子を観察。この地から見ると「ほぼ川」の大正池。エメラルドグリーンの水面の中央が白っぽくなっている様子を見て「やはり土砂で埋まってるんだなあ」と語った。「平らな上高地」に流れ込む沢が扇状地をつくり、そこから田代湿原が形成されている。かつて船を浮かべていた田代池が湿原化している様子を観察し「地形がどんどん変わっていくなあ」と子ども達は語った。

西穂丸山に到着し、子ども達は上條氏の説明を聞いた。地下3000mの地下にあった花崗岩が300万年前からの東西圧縮により急激に隆起。浸食を受けながらも標高2452mのこの地に露出していることを知り、改めて自然のパワーを感じていた。また、固い溶結凝灰岩と風化しやすい花崗岩の両方があることで穂高連峰のギザギザと西穂丸山が丸いことについて目の当たりの光景と照らし合わせながら理解することができた。西に見えている笠ヶ岳が6700万年間にでき、大陸からやってきたから地層が平らであること、176万年前にカルデラ噴火を起こした穂高連峰は槍ヶ岳と同様に東へ20度傾いていることも確認した。

下山後の帰路に奥飛騨ビジターセンターに立ち寄った。信州大学は原山智名誉教授監修の石やパネル、映像展示を食い入るように見学する子ども達。「あっ、槍ヶ岳の結晶片岩だ」「こうやって石を切断して磨くと模様がはっきり見えて面白いね」「自分達もやってみたい」と新たな意欲を持った。また、「焼岳噴火・大正池出現110年」を記念した企画展も見学。当時の新聞記事や映像を興味津々と観ていた。奥飛騨ビジターセンターの方が「高校生並みの学習していてすごいですね」と褒めてくださった。「来年は上高地から焼岳に登ってみたい」と新たな意欲もった子ども達だった。

授業について  記 入 者 担任
1 授業を通しての子どもたちの反応、感想等

【児童のふり返りより】霧を抜けたら絶景が広がっていて興奮しました。槍ヶ岳も笠ヶ岳も焼岳も見えてとてもうれしかったです。近くで見るとすごく迫力があるし、紅葉していてとてもきれいでした。しかも!下を見ると見事に雲海が広がっていて、人生で初めて雲海を見たので、また興奮しました。西穂山荘ではちょっと休憩してラーメンを食べました。私はみそにしました。「がんばって山登ってよかった」って思えました。
ラーメン食べたら西穂丸山まで行きました。若干天気がくずれ始めていました。でも、頂上に立った時はちゃんと景色が見えました。まわりがひらけていて何か心がきれいになっていく気がしました。結果的には晴れて絶景を見れたし、雲海・ロープウェーなど・・・たくさんのことがあって、とっても楽しかったし勉強になりました。

2 先生方の感想、要望等

【担任より】昨年度、信州大学原山智先生に案内していただきながら岳沢に登って平らな上高地を俯瞰していた子ども達。自然公園財団上高地支部の方とのフィールドイワークで「上高地は平らだから人と動物との距離に問題がある」ことも突き止めていた。今年度は、この日までに水殿ダム左岸土砂置き場から譲ってもらった「大正池の土砂」を使って学校花壇に「上高地リアルジオラマ」を製作し、地形の変化を経過観察してきた。また山と渓谷社「地学ノート」を中心に穂高連峰の地質も学んできた。こうした事前の学びを継続する過程での念願の西穂丸山ハイキング。学校花壇のジオラマの地形と石、これまでの学びが現地の景観とつながり、体験と実感を持った学びをすることができた。まさにフィールドワークの醍醐味である。こうした学びを実現するために同行してくださった中野氏、上條氏、中信地区環境教育ネットワーク両角氏他多くの方の心から感謝したい。